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坂野国際特許事務所
代表: 弁理士 坂野博行
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ホーム>商標(商標に関するご案内)>判例のご紹介(判例紹介)>真正商品の並行輸入|判例のご紹介(判例紹介)>事例4真正商品の並行輸入|判例のご紹介(判例紹介)
事例4|真正商品の並行輸入
|判例のご紹介(判例紹介)
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目次
<概要>
<結論>
<解説>
<まとめ・余談>
本サイトは、上記<概要>、 <結論>、 <解説>及び<まとめ・余談>で構成されています。項目をクリックすると当該説明の箇所へジャンプします。時間のない方は、概要、結論、まとめ・余談等を先に読まれると良いかもしれません。
より理解を深めたい方は、解説を参照すると良いかもしれません。更に理解を深めたい方は、実際に判決文を入手して分析をする事をお勧めします。
<概要>
この例は、輸入された商品が真正商品と判断され、その並行輸入が認められて、商標権、とりわけ専用使用権を侵害するものではないと判断された例です。(昭和54(ワ)第8489号)。
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<結論>
商標権者自身の製品ではなく、商標権者の子会社が出資している我が国以外の国の会社の製品を輸入したものであり、我が国で専用使用権者を通じて流通している商品とは品質が若干相違するものでも、並行輸入が認められる場合が有り得る。 |
本事例では、被告の行為は、真正商品の並行輸入に該当し、原告の有する専用使用権を侵害しないとされました。
結論から述べると、商標権者の子会社が出資している米国の会社の製品を輸入等する行為であっても、原告商標権者の商標「ラコステ」の出所表示機能は、害されていないため、輸入された商品は真正商品と判断され、その並行輸入が認められています。
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<解説>
原告ラ・シュミーズ・ラコステ社(以下原告ラコステ社という。)の登録商標は、以下のようです。
本事例を整理すると、原告が、ラコステ社及び日本国内でラコステから専用使用権の許諾を得た専用使用権者です。
一方、被告は、輸入販売業者であり、当該輸入販売業者は、アイゾット社から商品を輸入しています。当該アイゾット社は、ラコステ・アリゲーター社(ラコステ社の子会社であるスポルロワジエ・エス・エー社が47%の株式を有する)とのライセンス契約に基づき、ラコステ・アリゲーター社のワニマークの商標及びLACOSTE標章に関わる登録商標を使用しています。
すなわち、ラコステ社と、ラコステ・アリゲーター社との関係は、ラコステ・アリゲーター社は、ラコステ者の子会社であるスポルロワジエ・エス・エー社が出資している会社となります。経済的に関係があるということになります。
詳細は、判決文によれば、以下のようです。
すなわち、「三 抗弁(真正商品の並行輸入)について
1 原告ラコステがフランスほか多数の国で被告標章(一)と同一の商標の登録を受けていること及び抗弁一2(一)の事実(但しなお書きの部分を除く。)、同一2(二)及び(三)の事実、同一2(四)の事実(但し、アイゾツド社が一九八五年まで原告ラコステのライセンシーとしての地位にあることを除く。)、同一2(五)及び(六)の事実並びにラコステ・アリゲーター社が原告ラコステの全額出資の子会社(成立に争いのない甲第一五号証によると、同社はスポルロワジエ・エス・エーである。)がその株式の四七パーセント、米国ゼネラル・ミルズ社の全額出資の子会社(前掲甲第一五号証によると、同社はシーピージープロダクツである。)がその株式の四七パーセント、六名の取締役がその株式の各一パーセントを有する会社であることは当事者間に争いがなく、証人【D】の証言によると原告ラコステはフランスにおいてはLACOSTE標章についても商標登録していることが認められる。また、前掲甲第一五号証及びいみれも成立に争いのない甲第一四号証、乙第二及び第三号証によると、ラコステ・アリゲーター社の現在の代表者は、原告ラコステの代表者と同じく、【C】であること、ラコステ・アリゲーター社の業務内容は、米国、カナダ、カリブ海諸国において、ワニマークの商標(これが被告標章(一)と同一であることは成立に争いのない乙第九号証により認められる。)及びLACOSTE標章を商標登録して所有し、ライセンスを許諾すること、前記ライセンスに関し使用料を徴収すること、前記商標の下に販売をする商品の品質を管理することであり、この権限に基づいて、アイゾツド社ほか数社に対して、右地域における右各商標につきライセンスを与えていること、右ライセンス商品についてはその品質の管理を厳格に行なつていることが認められる。 そして、前掲甲第一四及び第一五号証、検甲第二号証並びに成立に争いのない乙第八号証の一ないし三及び証人【E】の証言によると、被告商品は、アイゾツド社がラコステ・アリゲーター社とのライセンス契約上、そのライセンスに基づいて生産した製品の販売地域を米国及びカリブ海諸国に限定され、これ以外の地域に輸出すること、輸出商社にこれを販売することを禁じられているので、特殊な経路すなわちアイゾツド社から名義上はローリング・ヒルズ・カントリークラブへ売却されたことにし、そこからエス・ワイ・トレーデイング社、更にニシザワ・リミテイツドを経て被告新進貿易によつて我が国へ輸入されて被告ミウラへ納品されたもので、アイゾツド社がラコステ・アリゲーター社とのライセンス契約に基づき生産した商品であることが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。」とあります。
判決文によれば、結論は、以下のようです。
すなわち、「2 右1の事実、前記二2(一)ないし(四)及び同二3(一)、(二)の事実によれば、原告ラコステは、その略称であり創立者の名称でもある「ラコステ」の名称とともに著名となつているLACOSTE標章及び被告標章(一)及び本件登録商標を含むラコステのワニマークを附した商品の出所源として我が国を含め世界的に認識され、また、このように認識されていることから生ずる業務上の信用維持のために、自ら、又はその資本的なつながりを通じて支配を及ぼすことのできるラコステ・アリゲーター社によつて、右各商標の管理をし、米国及びカリブ海諸国をその販売地域と定められたアイゾツド社や日本、韓国及び台湾をその販売地域と定められた原告三共生興のようなライセンシーに対し、その製造販売する商品の品質管理を厳格に行なつていることが認められ、この意味で米国におけるアイゾツド社も我が国における原告三共生興も、原告ラコステの信用の下でその信用を利用してその製造するラコステ商品を販売している点で同じ立場にあり、原告表示が原告三共生興の販売する原告商品を示す表示として広く認識されているのも、原告三共生興が世界的に著名な原告ラコステと提携しそのライセンシーとしての立場にあることに由来するものというべきである。そして、本件登録商標とLACOSTE標章、原告表示と被告標章(一)は標章の構成として同一ではないがそれぞれ類似していることは前認定のとおりであり、ともにその出所源として原告ラコステを示す一連のラコステ標章として同一視すべきものである。原告商品と被告商品との間に被告主張のような品質、形態の差異があるとしても、被服の品質、形態等については、これが一定不変というわけではなく、流行、時代等につれて当然に変化するものであることのほか、前記のとおり、原告ラコステが、日本におけるライセンシーである原告三共生興と、原告ラコステと資本的なつながりを通じて支配を及ぼすことのできるラコステ・アリゲーター社の米国におけるライセンシーであるアイゾツド社に、ラコステ標章として同一視できる商標の下で、品質、形態等の異なる商品を製造することを許容しているのであるから、右商品の品質、形態の差異は、世界的に著名な原告ラコステを出所源として表示する商品として、その許容された範囲内での差異というべきのであり、このことによつて商標の品質保証機能が損われることはないというべきである。
そうすると、本件登録商標あるいは原告表示と同様にその出所源として原告ラコステを表示しているLACOSTE標章あるいは被告標章(一)を附した被告商品を輸入しても、本件登録商標及び原告表示の出所識別機能、品質保証機能を損うことはなく、原告ラコステあるいは原告ラコステのライセンシーであり原告ラコステの信用の下でその信用を利用してラコステ商品を販売している原告三共生興の業務上の信用を害することも、一般消費者の利益を害することもないと認められる。」としています。
つまり、原告ラコステ社の日本におけるライセンシーである専用使用権者が提供する商品も、原告ラコステと資本的なつながりを通じて支配を及ぼすことのできるラコステ・アリゲーター社の米国におけるライセンシーであるアイゾツド社が提供する商品も、ともに著名なラコステを出所源としているから、出所表示機能が害されていないとしています。
また、原告ラコステ社は、ラコステ標章として同一視できる商標の下で、品質、形態等が異なる商品を製造することを許容しているのであるから、日本の専用使用権者が提供する商品と、アイゾット社が提供する商品の品質差は、世界的に著名な原告ラコステを出所源として表示する商品として、その許容された範囲内の差異であるから、このことにより商標の品質保証機能も損なわれないとしています。
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<まとめ・余談>
今回の事例では、原告ラコステの実質的子会社である、ラコステ・アリゲーター社が、ライセンシーであるアイゾッド社の商品を、厳格に品質管理している限りは、真正商品の並行輸入として認めています。
これは、本事例のように、アイゾット社とラコステ・アリゲーター社とのライセンス契約上、そのライセンスに基づいて生産した製品の販売地域を米国及びカリブ海諸国に限定され、これ以外の地域へ輸出すること、輸出商社にこれを販売することを禁じられていること、が規定されていても、このことは、並行輸入行為の実質的違法性を判断するにあたって考慮すべき事実にあたらないとしています。
結局、どちらのライセンシーが提供する商品も、大元の著名な商標ラコステが出所源と認識されるにいたっているから、出所表示機能がが害されないということになり、その結果、侵害とならないという結論になっています。
また、判決は、不正競争防止法の適用も、被告標章は、原告表示と同一の出所源(著名なラコステ)を示すので、不正競争防止法第一条第一項第一号にいう他人に該当しないとして、専用使用権者の禁止権の行使も認めませんでした。
本事例では、販売地域の契約違反では、真正商品の並行輸入を認めていますが、これが、契約以外の販売個数を製造し、余分に製造した製品を横流しした場合には、また違った判断がなされるように思われます。
最終的には、事例1の判断基準の当てはめにしっかり合致するかどうかが、真正商品の並行輸入として認められるかどうかということになります。
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