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坂野国際特許事務所
代表: 弁理士 坂野博行
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ホーム>商標(商標に関するご案内)>判例のご紹介(判例紹介)>真正商品の並行輸入|判例のご紹介(判例紹介)>事例5真正商品の並行輸入|判例のご紹介(判例紹介)
事例5|真正商品の並行輸入
|判例のご紹介(判例紹介)
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目次
<概要>
<結論>
<解説>
<まとめ・余談>
本サイトは、上記<概要>、 <結論>、 <解説>及び<まとめ・余談>で構成されています。項目をクリックすると当該説明の箇所へジャンプします。時間のない方は、概要、結論、まとめ・余談等を先に読まれると良いかもしれません。
より理解を深めたい方は、解説を参照すると良いかもしれません。更に理解を深めたい方は、実際に判決文を入手して分析をする事をお勧めします。
<概要>
この例は、輸入された商品が真正商品であると判断され、その並行輸入が認められず、商標権を侵害するものと判断された例です。(昭和44(ワ)第3882号)。
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<結論>
外国の著名商標を有する商標権者マーキュリー社(当該外国で登録、日本国内未登録))が、日本国において、その著名商標「MERCURY」を登録せず、その専用使用権者等も存在しない場合に、マーキュリー社以外の者で、マ―キューリー社と法律的経済的に関係がない者が日本において商標「MERCURY」の商標権者となった場合、マーキュリー社製の商品を輸入する行為は、商標権を侵害する。 |
本事例では、元々の著名商標を有する商標権者マーキュリー社製の商品を、日本国内に輸入する場合でも、別にマ―キューリー社と法律的経済的に関係がない者が日本国内で商標権者となった場合は、原則通り、商標権を侵害すると認められました。
商標登録を受けておくことの重要性が良く分かります。
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<解説>
まず、譲渡若しくは分割移転等により、原告は、下記の登録商標を有しています。すなわち、登録第418252号、
及び登録第789882号、
を有しています。
登場人物を整理すると、原告は、デイツタ・クレメンテ・エ・クラベロ社と代理店契約を結んでいたが、突然、当該デイツタ・クレメンテ・エ・クラベロ社は、被告に販売権を授与しました。
また、マーキュリー社とデイツタ・クレメンテ・エ・クラベロ社との関係は、親子会社の関係です。
マーキュリ−社は、イタリアにおいて、著名商標「MERCURY」の商標権を有していますが、我が国においては、商標権も、専用使用権等も有しておりません。
この場合に、マーキュリー社から商品を輸入した第三者は、どうなるのでしょう?判決によれば、原告の商標権を侵害するものとして、真正商品の並行輸入の抗弁は認められませんでした。
すなわち、判決文によれば、
「二 被告は、被告が輸入し、販売した前記商品は、いわゆる真正商品であるから、これには本件各商標権の効力は及ばない旨の主張をする。被告のいう真正商品の概念がいかなるものであるか、かならずしもはつきりしないが、被告の主張は、要するに、本件連合商標と同一の別紙第二目録記載の標章は、イタリヤ国のマーキユリー社がイタリヤ国特許局において商標登録を受けたものであつて、被告はこの標章を附したミニチユアカーを同社から輸入し、販売しているのであり、右標章を附したマーキユリー社のミニチユアカーはわが国のみならず、世界的に著名なものであるから、右商品は真正商品というべきであり、このような真正商品については、たといこれに附されている標章について右マーキユリー社以外のものがわが国において商標権を有していても、その商標権の効力は右にいう真正商品には及ばない、ということにあるもののようである。
しかしながら、仮に被告主張のマーキユリー社がイタリヤ国特許局において別紙第二目録記載の標章について商標登録を受けており、その商標を附したマーキユリー社のミニチユアカーが世界的に有名であるとしても、その商標を附したミニチユアカーをわが国に輸入し販売することは原告の本件商標および本件連合商標に対する商標権を侵害するものである。けだし、いわゆる真正商品の輸入として、わが国における商標権者が有する商標と同一の標章を附した商品を輸入することが、その商標権者の有する商標権を侵害するかどうかが問題となりうるのは、外国における商標権者がわが国においても同一の標章につき商標権を有しているか、あるいは他人に専用使用権を設定しているか、または、他人がわが国においてその標章について商標権を有してはいるが、その他人と外国における商標権者とが法律的(外国における商標権者の代理人たる総販売代理店であるなど)、または経済的(外国における商標権者とコンツエルン関係に立つなど)に密接な関係が存在する場合において、第三者が、外国における商標権者の製造販売した商品をわが国に輸入する場合であつて、外国における商標権者とわが国における商標権者とが法律的にも経済的にもなんらの関係もない場合には、わが国の商標権者は、たとえ外国においてその商標と同一の標章について商標権を有するものがあつたとしても、わが国における商標権に基づいて外国の商標権者から発出した商品の輸入を差止めうることはいうまでもない(各国商標権独立の原則−−工業所有権の保護に関するパリ条約第六条第三項参照)。しかして、被告の全立証によるも、原告と被告主張のマーキユリー社とが前に説明したような法律的、経済的に密接な関係を有していた、あるいは現在でもなおそのような関係にあるとのことは認められない。むしろ、被告は原告が取引していたと主張するデイツタ・クレメンテ・エ・クラベロとイタリヤ国において別紙第二目録記載の標章につき指定商品を玩具とする商標権を有するマーキユリー社(Ditta MERCURY)とは、親子会社であるが別の会社であると主張しているのであつて、このことを前提とするかぎり、上来説明してきたような意味で、被告の取り扱う商品は真正商品であるから、その輸入は原告の商標権を害しないとの被告の主張は、それ自体理由がないこととなる。」としています。
簡単に説明すれば、法主体が、イタリア国の商標権者と我が国の商標権者とで同一視できず、経済的(外国における商標権者とコンツエルン関係に立つなど)、法律的(外国における商標権者の代理人たる総販売代理店であるなど)に密接な関係も存在しない以上、たとえ外国で同一の商標にかかる商標権を有するものがあったとしても、我が国における商標権に基づいて外国の商標権者から発生した商品の輸入を差し止め得るとしています。
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<まとめ・余談>
もともとの著名商標の所有者は、イタリア国のマ―キュリー社でありますが、日本国で権利を取得していないために、当該マーキュリー社製の商品を日本国に輸入販売する業者は、たとえ、当該マーキュリー社から日本における販売契約をしても、別途、日本国で、商標権者がいる場合には、原則にしたがって、当該輸入行為は、商標権を侵害するものとされます。
十分注意が必要そうです。特に、外国で周知、著名な商標を付した商品の販売を開始する予定がある場合には、外国の著名商標に係る商標権者との契約も重要ですが、国内における商標権がどのように設定されているのか検討することも非常に重要です。
もし同一類似の範囲で商標権が設定されていないのであれば、商標登録をすべきでしょう。そして、同一類似の範囲で商標権が既に設定されている場合には、本事例のように、商標権の譲渡、分割移転を検討するほか、専用使用権等の使用権の許諾、異議、無効理由があれば、異議申し立て、無効審判の請求等も検討すべきでしょう。
最終的に、権利を確保できない場合、別商標の選択や、ビジネスモデルの変更も検討しなければならないかもしれません。
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