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坂野国際特許事務所
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ホーム判例集に関するご案内契約に関する判例(判例紹介)>事例1

  事例1 訂正請求、訂正審判 
      
    における通常実施権者等

         の承諾 


事例1                           (1)−1 平成15年(ワ)第26297号

目次
 <概要>
 <結論>
 <解説>
 <まとめ・余談>

 本サイトは、上記<概要>、 <結論>、 <解説>及び<まとめ・余談>で構成されています。項目をクリックすると当該説明の箇所へジャンプします。時間のない方は、概要、結論、まとめ・余談等を先に読まれると良いかもしれません。
 より理解を深めたい方は、解説を参照すると良いかもしれません。更に理解を深めたい方は、実際に判決文と、特許明細書を入手して分析をする事をお勧めします。


                                                  概 要

<概要> 
 本事例は、特許権者、専用実施権者が、通常実施権(登録)を設定していた場合に、第三者から無効審判請求をされ、訂正審判請求の承諾が得られなかったとき、通常実施権の設定契約の解除の有効性、訂正審判請求の承諾しないことが契約違反か否かが争われた事例です(平成15年(ワ)第26297号)。

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                                                  結 論

<結論>
 特許権の通常実施権の設定を受けた者が,当然に実施許諾を受けた特許の有効性を争うことができないとすると,無効理由を含む特許につき実施料の支払等の不利益を甘受しなければならなくなる。したがって,通常実施権者であっても,特許の有効性を争わない等の格別の合意がされない限り,実施許諾の基礎となった特許の有効性を争うことが許される。この理は,実施許諾の基礎となった特許について,第三者から無効審判請求をされた場合であっても同様であり,特許権者が無効理由を解消させる目的で行う訂正請求ないし訂正審判請求をする際,通常実施権者は,特許の有効性を争わない等の格別の合意をした場合でない限り,特許権者に対して,訂正審判請求等の承諾を与えないことは,当然に許される。(判決文抜粋)

 例えば、本例でいえば、権利者側からすると、1)「特許の有効性を争わない等の格別の合意をする。2)訂正審判請求、訂正請求の承諾を約束させる、などが必要そうです。一方で、実施許諾を受ける側は、承諾を留保することができることを条項に残しておく必要がありそうです。
 それでは、より具体的に内容を明らかにしていきます。

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                                                  解 説

<解説>
 まず、事実として、契約書には以下の条項が含まれていました。
判決文によれば、
「ア 〔第三者との紛争〕11条1項
 甲及び乙は,本施設の秩序ある普及を図るため,本特許(本件特許を指す。)又は甲乙の関係人が出願あるいは所有する工業所有権を第三者が侵害し又は侵害のおそれがあるときは,その排除又は予防に努めるものとし,丙は自らが可能な範囲でこれに協力する(以下,この規定を「本件協力条項」という。)。
イ 〔契約違反〕15条1項
 甲,乙及び丙は,いずれかの当事者が本契約の定めに違反した場合は,当該違反者に対して書面によって催告し,催告後30日以内に違反行為が是正されないときは,本契約を解約することができる。ただし,甲,乙及び丙は,合理的な理由がなければ本契約を解約することができず,いずれかの当事者による軽微な過失等を理由に本契約を解約してはならない。」というものです。

 裁判所では、以下の点が争われました。すなわち、判決文によれば、
「2 争点及びこれに関する当事者の主張
(争点)
(1) 被告が原告らの訂正審判請求について承諾しなかったことは,本件契約の
協力条項に違反するか。
(2) 被告が原告らの訂正審判請求について承諾をしなかったことは,信義則違
反又は権利濫用に当たるか。」の2点です。

 結論は、契約の協力条項に違反しないし、信義則違反でもなく、権利濫用にも当たらないとしています。

 理由は、判決文によれば、以下の通りです。
「第4 当裁判所の判断
 1 本件契約における解除理由の存否
 (1) 事実認定
 証拠(甲2,乙1),争いのない事実及び弁論の全趣旨によれば,本件契約締結の経緯及び本件契約の内容等について,以下の事実が認められる。
 ア 被告は,平成8年ころから,雨水貯留用充填体・アクアトップ(以下「被告製品」という。)の販売を開始した。これに対して,原告林物産は,平成11年9月及び平成12年7月に,被告製品が本件特許権を侵害する旨の警告書を送付した。原告ら及び被告は,特許庁における判定を経由した後,交渉を行ったすえ,本件契約書を締結した。本件契約において,被告は,原告シンシンブロックに対して,和解金として3000万円,通常実施権の対価として,所定の実施料(被告製品の販売数量を容積に換算して,1立法メートル当たり1000円)を支払うことが合意された。
 イ 本件契約書において,「原告林物産及び原告シンシンブロックは,雨水等の貯留浸透施設の秩序ある普及を図るため,本件特許又は原告林物産,原告シンシンブロックの関係人が出願あるいは所有する工業所有権を第三者が侵害し又は侵害のおそれがあるときは,その排除又は予防に努めるものとし,被告は自らが可能な範囲でこれに協力する。」旨合意された。
 (2) 解除理由の存否についての判断
 上記の事実経緯を前提として,本件協力条項違反の有無及び信義則違反等の有無について判断する。
 ア 本件協力条項違反の有無
 (ア) 本件契約書11条1項は,第三者から本件特許権が侵害又は侵害される恐れがあるときに,その排除又は予防に努める旨の義務を原告らが負う旨規定されている。同条項は,原告らにおいて,被告から所定の実施料等の支払を受けるなどの経済的な利益を得る代わりに,被告に対して,通常実施権を付与し,さらに,第三者が本件特許権を侵害し,又は侵害するおそれが発生するなどの事態が生じた場合には,通常実施権者たる被告のために,侵害行為を排除する義務を負う旨を約した規定であることは明らかである。同項は,「被告は,自らが可能な範囲でこれに協力する」旨規定されているが,同記載部分は,原告らが,本件特許権を侵害するなどの第三者を相手として,本件特許権を行使する際に,侵害態様や被害態様の主張,立証等において被告の協力が必要なときに,可能な範囲での被告の協力義務を規定した趣旨である。
 (イ) そうすると,本件においては,積水化学工業が本件特許について無効審判を請求したこと及び特許庁が本件特許について無効審決をしたことは,本件協力条項にいう「本件特許権を侵害し又は侵害するおそれがあるとき」に当たらない。また,上記無効審決の確定を阻止するために,本件特許について訂正審判を請求することは,本件特許権の侵害に対する「排除又は予防」行為に含まれるものではない。
 (ウ) 以上のとおり,本件協力条項により被告に協力義務を生じさせるための前提となる「本件特許権を侵害し又は侵害するおそれがある」との事実が認められないから,被告には本件協力条項により原告らの訂正審判請求に協力する義務,すなわち承諾義務はない。また,原告らが訂正審判を請求することは本件特許権に対する「排除又は予防」行為に当たらないから,被告には本件協力条項により訂正審判請求に協力する義務,すなわち承諾義務はない。被告が原告らの訂正審判請求について承諾しなかったことは,本件契約の協力事項に違反しない。
 イ 信義則違反の有無
 原告らは,被告が訂正審判請求の承諾をしないことが信義則違反又は権利濫用になる旨主張する。同主張は,本件契約の解除理由の存否との関係でいかなる意味を有するのか必ずしも明らかでないが,以下のとおり,原告らの主張は理由がない。
 (ア) 特許権の通常実施権の設定を受けた者が,当然に実施許諾を受けた特許の有効性を争うことができないとすると,無効理由を含む特許につき実施料の支払等の不利益を甘受しなければならなくなる。したがって,通常実施権者であっても,特許の有効性を争わない等の格別の合意がされない限り,実施許諾の基礎となった特許の有効性を争うことが許される。この理は,実施許諾の基礎となった特許について,第三者から無効審判請求をされた場合であっても同様であり,特許権者が無効理由を解消させる目的で行う訂正請求ないし訂正審判請求をする際,通常実施権者は,特許の有効性を争わない等の格別の合意をした場合でない限り,特許権者に対して,訂正審判請求等の承諾を与えないことは,当然に許される。
 (イ) 本件全証拠によっても,第三者からされた無効審判請求における無効審決に対抗するために原告らが行った訂正審判請求について,被告において承諾を拒否したことが信義則違反及び権利濫用に当たると解すべき事情は何ら存在しない(もとより,被告が承諾することを約した事実もない。)。
 したがって,原告らの前記主張は理由がない。」というものです。

 結論からすると、通常実施権者は、特許の有効性を争わない等の格別の合意をした場合でない限り、特許の有効性は争うことができ(したがって無効審判請求可能)、このことは、訂正請求、ないし、訂正審判請求する際に、特許権者に対して、訂正審判等の承諾をしなくてもよいとしています。

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                                             まとめ・余談

<まとめ・余談>
 契約書は、両者がWinWinの関係にあることが最も良いといわれいます。つまり、片方に有利な契約書は、直ぐに契約解除になりやすいからです。市販されている契約書集や、各機関から提供されている契約書のひな形を改めてチェックしてみましたが、特許の有効性を争わない等の合意を契約書の条項に入れているひな形は一つもありませんでした。
 ここで検討しなければならない事項として、独占禁止法上の指針はどうなっているのかという点です。独占禁止法は、公正取引委員会という機関によって運用されています。公正取引委員会から出されている「特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法上の指針→その後、改訂され、現在知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」によれば、不争義務のことが規定されています。引用させていただくと、
「(7) 不争義務
 ライセンサーがライセンシーに対して、ライセンス技術に係る権利の有効性について争わない義務(注14)を課す行為は、円滑な技術取引を通じ競争の促進に資する面が認められ、かつ、直接的には競争を減殺するおそれは小さい。
 しかしながら、無効にされるべき権利が存続し、当該権利に係る技術の利用が制限されることから、公正競争阻害性を有するものとして不公正な取引方法に該当する場合もある(一般指定第13項)。
 なお、ライセンシーが権利の有効性を争った場合に当該権利の対象となっている技術についてライセンス契約を解除する旨を定めることは、原則として不公正な取引方法に該当しない。
(注14) 「権利の有効性について争わない義務」とは、例えば、ライセンスを受けている特許発明に対して特許無効審判の請求を行ったりしないなどの義務をいい、ライセンシーが所有し、又は取得することとなる権利をライセンサー等に対して行使することが禁止される非係争義務(後記5−(6)参照)とは異なる。 」(知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針より抜粋)となっています。

 なお、以前の指針では、不争義務を原則禁止と明確にされていたようですが、この点緩やかになっているようです。


 特許権者側には不利になりそうですが、何も規定がないと条文に保証されているとおり(特127条)、通常実施権者等には、承諾する権利が留保されていることになります。もちろん、無効審判請求する権利も。
 皆様の契約書はいかがでしょう?一度チェックしてみてはいかがでしょうか?


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